絶対主従関係。-俺様なアイツ-
 思い出しては怒り始めた自分に、ブルブルと振り払うようにようやく作業服に着替えることにした。

いつまで怒っていたってしょうがないし、現実は変わらないもの。


 まずは目の前の仕事をこなして、一日でも早くお父さんともう一度暮らせるようにしなくちゃ。

ふかふかのベッドに置かれていた、晴海さんが言っていた作業服を手に取る。


 びらっと広げた瞬間、あたしは時が止まったかのように感じていた。


「う、嘘でしょ……?」


 そこにはフリルがまんべんなく施された白いエプロン。

肩の部分がふわっと広がったデザインのふんわりとした黒いワンピース。

胸元には赤いリボン付き。


丁寧に黒いタイツと、ベッド下に黒いパンプスが用意されている。


 まるで、どこかの絵本から切り抜いたような、そんなメイド服だ。


「しかもこんな姿をアイツに見られるってワケ……?」

 サーッと血の気が引くのを感じながら、なんとか足を踏みとどまらせる。

お父さんのためだ、こんなコトに負けてられない…!!


 ゴクンとつばを飲み込んで、あたしは黒いふわふわと広がるワンピースを手にした。


 まずは制服のブラウスに手をかけ、ボタンをひとつひとつ外す。

哀しきかな、ひもじい胸が見えたころだ。



 カツン、カツン……


 窓から何かが当たるような音が聞こえてきた。

最初は気のせいかと思ったけど、それは段々と強くなっていく。



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