絶対主従関係。-俺様なアイツ-
 目のまでは静かな藤堂家……といっても、実質アイツしかいない寂しい食卓。

まだ仕事は終わったわけではないのだ。


 そんな疑問も見透かしたのか、

「あなたも学校でしょう?」

 言われて気づいた。

部屋に飾られた年季が入っていそうな置時計は、すでに朝の八時を回っていた。

全く時間の計算をしていなかったあたしは、海をひっくり返したように一気に青ざめることになる。


「や…やばいっ!! い、いってきまーす!」


 広間を駆け抜けて自分の部屋へ戻る。

相変わらずアンティークな雰囲気は慣れないのだけど、この空間は少しだけ好きになれそうだ。


 びらびらした作業着を脱ぎ捨て、制服をキッチリ身に着ける。

これでどこからどうみても、住み込みの使用人だなんてわからないはずだ。



 青い空、暖かい風。

暑さも和らいできた空気を切るように、あたしは……



「はぁ、はぁ、はぁ……っ」


 ────全力疾走。



 屋敷から学校の距離なんて、まるで考えていなかった。

時計と睨めっこしながら、前の家よりも遠いことを実感し、無我夢中で走り続けた。


 そして、心に固く決意した。

バイト代が出たら、せめて自転車を買おう。


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