絶対主従関係。-俺様なアイツ-
「愛子ー、資金繰りなんだけどさ」

「わわ、涼原さんっ!どうしようっ」

「涼原!衣装の生地、調達できたのかっ?」


 ざわめく放課後の教室内は、すべてあたしに向かってくるかのごとく。

手元の資料を片手に、飛び交う言葉を忘れないようにするのが精一杯だった。


「はいはーい、ちょっと待ってー!」

 貧乏クラスのB組……とはよく言ったものだ。

けれど、あたしたちには、ミカドたちには持っていないものもある。


それを生かすも殺すも、実行委員であるあたしの手腕にかかっているのだ。


「愛子、張り切ってるね」

 ようやくかけられた声にすべて対応しきったときだった。

教室の隅で一人椅子にもたれていると、ふと影が落ちる。


そして、優しい言葉とともに、あたしの大好きなロイヤルミルクティーの缶が目の前に現れた。


 ぽとり、と手のひらに落とされたその先をたどると、あたしの心のオアシスがいた。


「ありがと、小町」


 いーえ、と、さも当然のように暖かく笑ってくれる小町にどれだけ救われているのだろうか。


 学校でも屋敷に戻っても、キリキリな毎日を送っている近頃。

だから、小町が隣にいてくれる時間は、とても貴重な癒しの時間なんだ。


思わずふう、とため息をつきながら笑ってしまった。


「……なんか、あった?」


 椅子を引っ張り出して、男の子なのにぱっちりとした瞳を使って小町は覗き込んでくる。

ささいな仕草に、一瞬ドキリとした。


けど、それはきっと突然だったからだ……きっと。


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