嘘とワンダーランド
政略結婚の話が出なかったら、課長と千沙さんはつきあっていたはずだ。

もしかしたら結婚だって…。

全ての始まりは『ふくだや』への融資援助が条件の政略結婚である。

この話が出たから、課長と千沙さんは別れることになってしまったのだ。

「何か顔色悪いけど…大丈夫か?」

京やんがわたしの顔を覗き込んできた。

「少し冷えちゃったかも…」

呟くように、わたしは答えた。

「最近冷えるようになってきたからなあ。

俺も体調を崩さないように気をつけねーと」

京やんはやれやれと言うように息を吐いた。

彼に全てを告白することができたら、どれだけ楽なことなんだろう?

課長が千沙さんと別れたのはわたしのせいだって言えたら、どれだけ楽なんだろう?

政略結婚が原因で2人の関係を壊してしまったと言えば、どれだけ楽なんだろう?

心の中にある罪悪感を軽くするように、わたしは彼に気づかれないように息を吐いた。
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