嘘とワンダーランド
考えた後、わたしはメールを作成した。

『ごめん!

今日はお兄ちゃんが泊まりにきてるから…』

我ながら何と言う古典的な言い訳なんだよ…。

お兄ちゃんもいなければお姉ちゃんもいないって言うのに…。

断る理由は他にもあったはずだけど、これ以外に何も思い浮かばなかった。

自分のボキャブラリーのなさに呆れながら、わたしは圭介にメールを送信した。

「あーあ…」

わたしにも彼氏がいるのに…。

来年には結婚かなーって、ちらほらと話していたのに…。

彼氏がいることを家族に言わなかったわたしもわたしで悪い訳なんだけど。

カバンから充電器を取り出すと、電池の量があまりないスマートフォンを充電させた。

「早くお風呂に入って、ご飯食べて、寝よう…」

明日も仕事だと思いながら、わたしは寝室を後にした。
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