嘘とワンダーランド
「多国籍料理のレストランなんだけど、何か嫌いなものがあったか?」

「特にないですけど…」

その質問に答えた後、わたしはお腹に手を当てた。

ディナーを予約していたんだったら教えてくれればよかったのに…。

「わたし、結構お腹がいっぱいなんですけど…」

さっきのお店で食べて飲んだから、お腹はほぼ満腹である。

呟くように言ったわたしに、
「デザートもあるから大丈夫だ」

課長が笑いながら言った。

「いや、そう言う問題ではないんですけど…」

「残したら俺が代わりに食べてやるから」

「それも違います…」

すっかり冷たくなった夜風がわたしたちの間を通り過ぎたけど、ディナーへと向かうわたしたちの足取りは軽かった。
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