嘘とワンダーランド
「今までみたいにコソコソする必要はない。

お前はもう俺の妻だ。

だから、堂々としていればいい」

課長がそう言ったので、
「はい」

わたしは首を縦に振ってうなずいた。

手を繋いで出勤してきたわたしたちに、オフィスは騒然となった。

「えっ、ウソでしょ?」

「福田さんと朽木課長が!?」

「んなアホな!」

「いや、何かの間違いだろ」

オフィスのあちこちからあがる声に、すでに事実を知っている京やんはクスクスと笑っていた。

「京極、お前は福田と仲がいいから絶対に知ってただろ!?」

デスクに身を乗り出して聞いてきた同僚に対して、
「いや、知りませんでしたよ?」

京やんは笑いながら返したのだった。
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