嘘とワンダーランド
ホテルからタクシーに乗ったおかげで、会社に早く到着することができた。

10時は過ぎていたけれど。

周りの視線がわたしたちに集中している。

当たり前だ。

「どうして手を繋ぐ必要があるんですか?」

そう聞いたわたしに、
「どうせ、わかることだ。

今のうちにアピールしとけ」

課長が言い返した。

男と女で、10時過ぎの出勤で、そのうえ手を繋いでいて、極めつけはお互い昨日と同じ服と言う状況である。

周りがわたしたちを見ないと言う方が間違っている。

恥ずかしいにも程があるわよ…。

何のバツゲームなんですか、これ…。

心の中で嘆いているわたしに、
「若菜」

課長がわたしの名前を呼んだ。
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