嘘とワンダーランド
3◇浮気疑惑と胸の痛み
人間、集中すると何でもできるんだなって思う。

定時ジャストで今日の仕事を全部終わらせると、パソコンの電源を消して荷物をまとめた。

チラリと課長に視線を向けたけれど、彼は熱心な様子でパソコンに向かっていた。

一瞬だけ課長に遅くなることを連絡しようかと思ったけれど、わたしの行動に一切口を出さないと言う約束を思い出したのでやめた。

少しくらい遅くなるかも知れないと言うこと…最悪の場合は、泊まりになるかも知れないと言うことを課長に話す必要なんてないか。

そう思いながら荷物をまとめ終えると、
「頑張ってこいよ」

まだ仕事をしている京やんが話しかけてきた。

「うん、頑張る」

わたしは首を縦に振ってうなずいた。

カバンを肩にかけると、
「では、お先に失礼しまーす」

まだ仕事をしている同僚たちに声をかけた。

「はい、お疲れ様」

返事を返してくれた同僚の声を後にすると、オフィスを飛び出した。
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