GOLD BOY〜不良彼氏〜
「芸能人になったら、忙しくなって美鈴と遊べないかもしれないじゃないですか」
サラッとそう言ってみせた。
やっと葵もお母さんに慣れてきてくれたみたいで、私は1人その場でホッと安心していた。
それからはみんなでリビングに入った。
すると、さっそくカップが割れてることが、お母さんにバレて冷や冷やしていた。
きっと耳元で怒鳴られるんだろうなー…って怯えていた。
けど、お母さんは意外にも、その割れたカップを拾いだした。
「形ある物はいつかは壊れるからね。ってか、あたしたちが来る前に拾っときなさいよ。破片踏んだらどうするのよ」
お母さんがこんなこと言うなんて予想できなかったし、言うはずないって思ってた。
それなのにこんなこと言っちゃうから、本当は拾うのを手伝わなきゃいけないのに、キッチンから動けなかった。
珈琲を入れようとキッチンまで来たのは私だけで。
あとの4人はリビングにいて、いつも私がご飯を食べてるテーブルの近くでカップの破片を拾っていた。
お父さんと葵も破片を拾うのを手伝っていて、お母さんは玲香が拾おうと出した手を掴んで止めた。
「玲香は危ないから拾わなくていいよ。それより美鈴からビニール袋貰ってきてくれる?」
玲香に向けての優しい言葉がキッチンにいる私にも聞こえた。
.