【短】初恋ラビリンス

「でも それって陽が悪いよ...」

「あぁ、知ってる」

弱々しく微笑む陽。

それでもこれは陽が悪い。

「私、謝らないと...久坂さんに」

「明日 一緒に行こう、謝りに」


私は久坂さんを誤解していたかもしれない...


陽の手は震えたままだ。

「これで分かってくれた?」

私は頷く。


ホッとしたのか 震えが止まった。


「でもね、陽。
私ね 陽がそんな人だと思わなかった」

私がこんなことを言うと 陽はビクッと体を震わせた。

「引いた?」

「うん、引いたよ
人の気持ちを弄ぶような人だと思わなかったから」


陽は俯いた。


「なら、答えは分かってるか...」

小さく呟いたのがわかった。


その陽の声を消すかのように私は答えの声を被せた。


「それでも私は陽が好きだよ。
久坂さんには悪いけど、私は何年も陽のこと好きだから 告白されて嬉しい。
それに陽のことも知れたから、悪いことだったけどね」


最後は笑ってなんでもないことのように装う。

本当は胸がドキドキしてて 聞こえてないか心配だったけどそんな心配はいらなかったみたい。


最初は私の返事を理解してないのかポカーンとしていた陽だったけれど、次第に顔が真っ赤になっていった。


「唯」

「なぁに?」

「俺、今幸せ」

「うん、私もだよ!」

「なら今、考えていることは同じ?」

「多分ね」


陽は私をギューッと抱きしめると キスを何度もした。

今まで 出来なかった分もするかのように...





ーfinー
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