「なあ、海は何で青いか知ってる?」

浜辺に座って、海を眺めながら呟いた。

「え?…そうね…
空の青が海に映ってるからじゃないかしら。光の反射具合や塩分濃度によって、色も変わるけど…」

あれから暫くして、俺には彼女が出来た。あの子とは対照的で、根拠のないことが嫌いで、理屈的な俺と似ている、頭の良い子。付き合った理由は、考え方が合うからだった。
あの日の俺と、同じ答え。同じ考え方。そして、正しい。
でも、そんな彼女の答えが、なぜかとても可笑しくて、とてもつまらなく思えた。

「ざんねん、不正解。」

正しい答えを言ったのに不正解と言われる不可解さに、彼女は眉をひそめた。

「正解は、
空のことが好きでずっと空を見てたら、気づけば自分も空色になっちゃったから… でした。」

普段からは考えられない、むしろ嫌っていた、あまりにも感情的で不条理な返答に、彼女も俺自身も驚いた。

「…なに?それ。随分メルヘンチックね。
海自体に色は無いわよ。だって、ただの塩水じゃない。それに、空に恋だなんて…」

彼女は、悪い冗談はやめてというような顔で、俺の方を見た。


「夢ないなぁ。こう考えた方が、素敵だろ?」


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