最強甘々計画


 今日はいつもより一日の勤務を早めに終わらせることを心がけた。塩河さんに仕事終わりに用があると、前以て連絡されたからだ。


 専用のパソコンで退勤記録を済ませてから、塩河さんに指定された休憩スペースに向かう。


「ままれちゃん、お疲れさま」


 既にそこで待っていた塩河さんが、手を大きく振ってくる。


「俺、あれから考えてみたんだ。ままれちゃんがどうやったら、甘いものに馴染めるか」


 塩河さんは大きめの紙袋を持っている。


「まずは親しみを持つことからじゃないかな、部屋にこんな雑貨を置いて」


 その紙袋から、キャンディのかたちをしたティッシュカバーを取り出した。女性向きな、とても可愛らしいデザインだ。


「え! こんなにたくさん、いいんですか?」


 紙袋の中には他にもクッションやペンケースなども入っていて、どれもお菓子のデザインをしている。


「そんなに値段張ってないし、こういうのでよかったら」


「嬉しいです。あっ、このクッキーのストラップ、スマホに付けます」


 私は紙袋に入っていたストラップを、自分のスマホに付けた。プラスチックでできた市松模様のクッキーが、小刻みに揺れる。


 塩河さんはどうして、こんなに親切にしてくれるんだろう。


 相談を受けた立場だから? 企画部副部長としての血が、騒ぐから? それだけだったら、悲しい。
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