最強甘々計画


「いいんですか?」


 助け船を出したつもりはないのに、どうして私がイチゴを欲していることが分かったのだろう。でも、言葉にしなくても相手の心を読んでくれる人って、いいな。


「イチゴが欲しいって顔、してるよ――はい」


 塩河さんがフォークを使って、赤く丸々としたイチゴを、ケーキの部分だけを残した私の皿まで運んでくる。


「ありがとうこざいます!」


 まるで敗者復活をした気分だ。今度は後先よく考えて、甘味と酸味をバランス良く食べよう。


 よく、ショートケーキのイチゴは最初に食べるか最後に食べるかって議論されてるけど、私はケーキの部分とイチゴを交互に食べるを繰り返したいかな。(さっきは思いきり、最初に食べてしまったけど)


「んー、美味しい。幸せ」


 私とは正反対に甘いものが大の好物だという塩河さんは、イチゴのないショートケーキを一口食べると、目を細め、舌を唸らせている。


 甘いものを食べられるようにする。今日一日ではそんな私の小さな目標は達成できそうにないけれど、自分より五歳は年上である塩河さんのこんなかわいい笑顔が見れたし、良しとしようか。


 甘いものが好きな人って、なんだか楽しそう。充実していそう。だってこの世は、たくさんのお菓子やデザートで溢れている。それが苦手で食べないだなんて、もったいない。甘党な塩河さんを間近で見てると、更にそう感じてくる。


 私は右手のフォークでケーキを大きめに切り、一気に口に入れる。


 うっ……甘い! やっぱこの味、だめ!
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