最強甘々計画


 塩河さんの手によって五ミリほどの厚さになった生地を、二人で手分けして、人の形をした抜き型で抜いた。


 それをクッキングシートを敷いた天板に等間隔で並べ、一八○度のオーブンで、十二分焼く。


「自分の子供みたいで、可愛い」


 私はヒーターの熱で赤々と照らされる、天板に寝そべった人型クッキーたちを見守った。


 待つこと十二分。塩河さんと同時に、焼きたてを頬張る。


「んー! 美味しいです!」


 初めて作った型抜きクッキーに、私は大満足した。サクサクとした食感が、私好みだ。


「お砂糖なしでも別にいいね」


 甘党の塩河さんが食べても違和感のないことに、ほっとする。


 私はクッキーをつまみながら、〈自分が食べた甘いものノート〉に〈型抜きクッキー〉とだけ書く。


「ずっとまめにメモしてるんだね」


 塩河さんがそんな私を見ている。


「あれっ? これって……」


 未だ使いはじめて一ページ目のノートを注意深く見た私は、あることに気づく。


「どうかした?」


 塩河さんからの問い掛けもおざなりに、私はノートに書いてある自分の文字を見つめる。


 ケーキも市販菓子も和菓子も、どれも塩河さんといる時に食べている。


 私が甘いものを食べる時はいつも、そばに塩河さんがいるんだ。


 このノートに書き綴るのは、塩河さんとの思い出。


 そんな日々が、ずっと続いていけばいいのにな……。


「うー、お腹いっぱい……」


 大量のクッキーとコーヒーで満腹中枢を刺激した私の体に、眠気が襲ってくる。それによって私は体を動かすのが窮屈になり、リビングのソファに寝込んだ。
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