最強甘々計画


 私は足早に、リビング・ダイニング・キッチンへと向かう。


 塩河さんは昨日と同じエプロンを着て、キッチンに立って何やら調理をしていた。それによって室内は、甘い匂いが立ち込めている。


「おはよう。今、朝食にホットケーキ、作ってるからね。歯、磨いたら? ままれちゃんの分の歯ブラシ、洗面台に出しておいたから」


(わあっ……)


 朝の時間にも関わらず身なりに抜かりのない塩河さんを見た私は、言葉を失った。この流れがまるで同棲生活の、はたまた夫婦生活の一時みたいで、どきどきとする。


 塩河さんが自分の恋人だったら、絶対に楽しいだろうな。


「すみません。昨日は寝てしまったみたいで……一晩泊まってしまったみたいで」


「ううん、気にしないで」


 昨日は私の寝てる間に、何かあったのだろうか? 私と塩河さんは、一線を越えてしまったのだろうか? そんな質問もできないまま、私は歯を磨いた後、塩河さんと共に朝食を取る。


「ごめんね。昨日クッキー食べたばっかなのに、またホットケーキミックス料理作っちゃって」


 塩河さんが後頭部に手を添えながら詫びてくる。今朝はよっぽどホットケーキの気分だったのだろうか? お茶目で可愛いな。


「いいえ、全然。塩河さんが作ってくれたホットケーキ、ふっくらと焼き上がって、とても美味しいです。バターと合いますね」


 見た目より甘さのないホットケーキは、何の問題もなく口にできていた。ホットケーキの熱で溶けたバターが、ホットケーキの美味しさをより引き立てる。


 私とホットケーキミックスの相性は、かなりいいかも。


「……昨日は俺に食べられたかと思った?」


 食事の途中、塩河さんに訊かれた。


「えっ?」


「ままれちゃんのことはまだ食べないよ。デザートは最後に食べるものじゃん?」


 ――ままれちゃんの誕生日は、俺が祝いたかったけどね。


 塩河さんはあの台詞を口にした時みたいな、不敵な笑みを浮かべている。


「……」


 緊張と動揺がいっぺんに混ざり、私は頭のてっぺんから手足の先まで硬直する。舌の上ではだんだんと、食べていたホットケーキの味もしなくなる。


 それって、塩河さんは私に、その気があるってこと……!?
< 23 / 62 >

この作品をシェア

pagetop