最強甘々計画


「どんな風にですか?」


 私が首を傾げると、そこから塩河さんはファミリーパックに入っている一口チョコレートを、テーブルに広範囲で広げはじめた。


「俺とままれちゃんの場合は、『お菓子をくれなきゃいたずらするぞ』じゃなくて、『お菓子を食べなきゃいたずらするぞ』!


 ままれちゃん、この中のお菓子をどれでもいいから、一つは食べて。甘いものが好きじゃないままれちゃんにとっては酷な話だけど、ごめんね。


 だけど君がお菓子を食べなかったら、俺は君にいたずらする。だって甘いものを克服するのが、君の目標なんだろう? 本気だよ」


「えっ、えっ……」


 塩河さんの唐突な提案に、私は困惑する。けれども普段見ることのないその強引さは、全然嫌じゃなかったり。


「はい、ままれちゃん。食べて」


 塩河さんは一口チョコレートの包装を開けてから、それを親指と人差し指で持って、私の前に差し出した。絶対命令と言わんばかりの、意地悪そうな顔をしている。優しい塩河さんにも、こんな一面があるんだ。


 ここで塩河さんに「あーん」をされるのも、すごくいいかも。でも……。


「私、お菓子、食べません」


 私は首を左右に振る。塩河さんが立てた計画を、初めて拒否した。


「塩河さんに、いたずらをされてみたいです……」


 私は本音を漏らした。私からの暗黙の誘いに、塩河さんが徐々に真顔になる。


「……好きだ。ままれちゃん」


 こっちにやって来た塩河さんに、上半身をぎゅっと抱き締められた。
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