俺の彼女は車椅子でした。

石原優人


「先生、ありがとうございました」

「いいえ、ちゃんと暖かくして寝るんだぞ?」

小児科で働きはじめて4年

そろそろ慣れ始めてきた


「石原先生、今日用事があるって行ってなかったっけ?もう上がっていいよ」

「あ、そうでした!すいません。
先に失礼します」


急いで着替えて病院を飛び出す

家に帰ってクローゼットから礼服を取り出す


もっと早く出しとけばよかった

クローゼットの匂いが染み込んでいた


まぁいいか

シャワーを浴びて上に着る

あぁ、時間がない

急いで革靴を履いて車に乗った

奈々の家に向かう


車を走らせ三十分弱

ここの家に来たのは1周忌の時以来だな…

インターフォンを押す

奈々のお母さんが出てきた

奈々の遺影を持って

「わざわざありがとうね
奈々も喜んでるわ」

「いえいえ。では、お預かりします」

そして遺影を助手席に乗せ車を走らせる


「久しぶりだな、奈々」

高校の制服を着た奈々が隣で微笑んでいる

「奈々も緊張するか?
俺もちょっと緊張してんだよな
結婚式のスピーチ、一緒に頑張ろうぜ」

車のアクセルを踏んだ



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