イジワル上司の甘い求愛

「有瀬さんも聞いてたんですね。社長の一人娘の玲美さん、帰国されているってこと」

背中が一気に冷たさを感じた。

体の中から何かが落下していくような気分だ。

「うっ、うん……」


そんなこと、知らなかった。

濱田くんには何も知られたくなくって、曖昧な返事をするしかない。

「いよいよ浦島さんも結婚ですかねぇ。最近、特需販売事業部の業績が右肩上がりになっているのは浦島さんの力だって聞きました」

濱田くんのやけに明るい声色が、私の心をどんどん暗い穴の中に沈めていく。

「やっぱり、愛はパワーなんでしょうね」

濱田くんは何かのキャッチフレーズのようにそれだけを言うと、パソコン画面に視線を戻した。

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