イジワル上司の甘い求愛
「どうしたんだよ?チャキ」
「どうしたって、どうかしてるのは浦島さんです」
浦島さんは、急に立ち止まってしまった私の様子を見てきょとんとしている。
あの時、初詣の帰りの公園ではっきりと返事が出来ていたら良かったのに。
答えなんて決まっているはずなのに、どうしてこうも言葉が続かないんだろう。
「お正月休みが明けて会社に来てみたら、浦島さんの婚約破棄の噂は流れているし……」
ここが会社からそれほど離れていない道端ってことも忘れて、私はぶつくさと喋り始める。
ムードの欠片なんてない歩道に向かい合って佇む私と浦島さんを、私たちと同じように会社帰りの人々が好奇な視線を投げかけながら通り過ぎていく。
俯いた私に、浦島さんはあぁ、なんてそっけない相槌を打つ。
『好き』ってただ一言いえばいいだけなのに、どうしてこんなときもまた可愛げのない、素直になれない私が邪魔するんだろう。