イジワル上司の甘い求愛


4月――

新年度を迎える頃には浦島さんは社内屈指のイケメンで将来有望人材の一人という認識が定着していた。

ちなみに海外で生活している玲美さんとは婚約して、玲美さんが大学を卒業して生活が落ち着けば結婚するって話を聞いたんだった。


つまりは、将来有望というより将来の社長候補にのし上がったんだ。


だけど、そんな浦島さんを見る目は温かいものばかりではない。

企画が通れば『社長のコネだ』と全く関係ない部署から陰で言われていることだってある。
それに、社長賞だって『社長令嬢を虜にしたご褒美』だなんて揶揄されることだって。


あの創立記念パーティー以来、浦島さんが今まで以上に仕事に打ち込んでいることは、企画部のみんなが知っていることなのに、それでも企画部の社員からも冷たい視線を送られることだってあるんだ。


だけど、浦島さんはそんな噂や冷たい視線なんてどこ吹く風といったところだ。

左薬指に眩しい程に輝く指輪をつけて、熱心に仕事に取り組む様子はいつもと変わることなんてない。


愛はパワーだ、とこういうことを言うのかもしれない。

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