イジワル上司の甘い求愛

予定されているプレゼンなんてない。

浦島さんと戦うことすらもうなくなってしまう。

ううん、それだけじゃなくてオーダーメイドの受注だって今後は企画部ではなくて、浦島さんがいる特需販売事業部が担う。


勝ちだとか負けだとかじゃなく、戦う場所すら取り上げられた形だ。


だけどカイセイハウスとのプロジェクトを浦島さんから引き継いで、成功させることで何か変わるかもしれない。


そう思うことにしよう。

『浦島さんと離れることになって、良かった?』

さっき梨沙から聞かれた質問、今なら答えることが出来る気がする。


追いかける人が居なくなって、なんだか心にポッカリ穴が開いた気がする。

良いわけでもない、悪いわけでもない。

『喪失感』

それが一番近い気持ちなのかもしれない。

自分の気持ちがはっきりしたら、なんだか引継ぎにも前向きに取り組めそうな気がした。
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