虹色のラブレター

すると、千鶴は立ち上がって、布団を奥の和室の方に引っ張りだした。


「じゃ、私はこっちの部屋で寝るね」


なんだか寂しい気がしたが、当然のことだ。

僕は千鶴のことが好きだけど、付き合ってるわけではない。

同じ部屋で寝ることも不自然なことなのだ。

でも、気持ちを伝えることは出来ない。

千鶴には彼氏がいるし……何より彼女を僕のせいで苦しめたくない。

僕は、千鶴がこっちに出てきて、僕のことを頼りにしてくれて、今、一緒に居ること。

それだけで十分幸せだった。

片思いでも、友達でも、ただの知り合いでも……なんだっていい。

僕は、千鶴の傍に居ることが出来たらそれだけでいい。


そんな風に思った時、美貴のことが頭に浮かんだ。


”きっと美貴さんも今の俺と同じ気持ちなのかも知れない”




どうして僕たちは、もっと単純に恋愛できないのだろう?


僕は君が好きで、君は僕が好き。


どうして、そうでなければ恋は実らないのだろう?






< 133 / 278 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop