強引上司の溺愛トラップ
話によると、彼女――新庄(しんじょう) 千鈴さんは、課長のご実家のすぐご近所に家があり、千鈴さんのお母さんと課長のお母さん同士が非常に仲良かったこともあり、ふたりは小さな頃からよく一緒に遊んでいたという。
そして、私が不安していたことは的中した。
「本当にビックリしたわ。数年前ね、優くんのお母さんから突然、優くんと結婚しないか、なんて話があったのよ。それまでただの幼なじみだったのに、突然そんなこと言われたら、誰だって驚くわよね」
……やっぱりだ。
やっぱり、千鈴さんが課長の許嫁、なんだ……。
「それまでただの幼なじみ、じゃなくて、今だってただの幼なじみ、だろ。変な言い方すんなよ。こいつ、単純だからすぐに勘違いしちまう」
課長が私のことを横目で見やりながら、千鈴さんにそう言う。
単純とは何だ、とも思ったけど、これは私に誤解をさせないようにそう言った課長の優しさなのだと思い、何も言い返さなかった。
だって、課長が何も言ってくれなかったら、きっと私は、またどうしようもない不安に襲われていただろう。
「きょ、今日はどうされたんですか? 確か、海外に留学されていたって聞いていたのですが――」
「あら? どうして知ってるの?」
「え、あっ! その、以前、少し! 少しだけっ!」
緊張して、思わず言わなくていいことを口走ってしまった。
私と課長の関係、千鈴さんにバレたらマズい、って訳じゃないと思う。課長と千鈴さんは本当にただの幼なじみみたいだし、私たちはやましいことをしている訳じゃない。
でも、私が勝手に話すのは違うと思うし、課長が話すまで、私のせいでバレたりすることはないようにしなきゃ。