強引上司の溺愛トラップ
なのに課長は。


「……避けんなよ」

ちょっとムスッとした様子でそう答える。

そんなこと言ったって、ただでさえ男性が苦手で、何の経験もないのに、急に顔近付けられたって、正しいリアクションなんて分かんないよ‼︎



そんな気持ちを、やんわりと課長に伝えると。


「……俺だって、こんな気持ち慣れてないから、どうすればいいのかなんて分かんねぇんだよ」

「な、何のことですか」

「……いや、慣れてないんじゃなくて、初めてだな」

「え?」

「気付け、バカ」

「ば…」


ちょっと待ってよ。何で課長に一方的にバカなんて言われなきゃいけないの。私が何をしたの。そんな文脈じゃ、意味が分からない方が普通だと思うのに‼︎



……と、思うけど、相手が課長なのでそこまで言えず、「ちょっとよく意味が…はは」と、曖昧に笑いながら答えた。




……すると。



「あーもう‼︎」

課長がバリバリと自分の頭を掻きだした。


そして。

「どうすりゃいいのか分からないなら気付いてもらうしかねぇとか思ってたけど、お前がニブいから無理そう!」

「ニブ⁉︎」

「だからもう開き直ってハッキリ言う!」

「は、はいっ」

「好きだ」

「はい……




…え?」
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