強引上司の溺愛トラップ
「お前がタクシーに乗った瞬間、本気で吐きそうになった。座ったらちょっと楽になるかと思ってタクシー乗り込んでみたけど、揺れが頭に響いて、余計に吐きそう」

「えっ、ぁふ、あの、課長の家はS区の方ですよね⁉︎ 運転手さんすみません! そこを曲がって、S区の方へ先に向かってくれますか! そして急いでくれますか⁉︎」

「いや、渡辺……出来れば急がないでゆっくり……」

「運転手さん! ゆっくりお願いします!」

ただでさえ初めから不機嫌気味だった運転手さんのイライラがピークに達したのを感じた。申し訳ないと思った。




課長の住むマンションの前まで着くと、私も課長と一緒にタクシーを降り、タクシーには帰ってもらった。

タクシーは後でもう一度別のを呼べばいい。それより、今のこの状態の課長をひとりにさせる訳にはいかない。


とはいえ。

「あの、お部屋まで行く訳にはいかないので、マンションの入り口か、せめてお部屋の前までの付き添いになりますが、大丈夫ですか?」


さすがに、彼氏でもない男性のお家の中へとおじゃまする訳にはいかない。よっぽど重病人なら話は別だけど……。


「大丈夫じゃないから、部屋まで来てくれる?」

「は、話し方もハッキリしていますし、もう大丈夫そうですね。では」


一瞬ちょっとドキッとしたけど、単に課長にからかわれただけだよね。私は課長に背を向けて、そのままタクシーをつかまえるため、大通りに戻ろうとする。
すると。
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