強引上司の溺愛トラップ

何だか嬉しくなってしまいます。

その日、仕事が終わり家に帰ると、早太くんが家に来ていた。用事があって仕事帰りに立ち寄ったらしい。もう帰るところだったらしいけど。


「あ、そうだ。佐菜、これやるよ」

帰り際に、早太くんはバッグから何かのチケットを二枚取り出した。


それは、まさかの、課長に誘われた遊園地のチケットだった。しかも、例の『カップル限定ラブラブデー』の日にしか使えないチケットだ。


「い、いや、私恋人いないし……早太くんが使いなよ」

「俺もそのつもりでチケット買ったんだけどさー、あいにくその日が仕事になっちまって。カップル限定ってなってるけど、男女ペアでの入場なら兄妹でも友人同士でもいいってチケットに書いてあるしさ。神か日路と行ってこいよ」


あ、兄妹で行ってもいいんだ……。カップル限定ラブラブで―は今度の土日だから、土曜日に課長とどこか違うところに出かけて、日曜日に神くんか日路くんと行こうかな……。


なんて思うのに、チケットを握り締めながら脳裏に浮かぶのは、課長の顔ばかりで……。



「……もしかして、本当は誘いたい人がいるんじゃないのか?」

「えっ!?」

早太くんからの突然の言葉に驚く。な、何で分かったの!? 私、早太くんには課長のこと何も言ってないのに!



「佐菜は昔から分かりやすいからなー」

とはいえ、早太くんはそれ以上は何も言わずに、家に帰っていった。


チケット、どうしよう……。
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