強引上司の溺愛トラップ
『カップル限定ラブラブデー』の今日は、男女ペアじゃないと入園の出来ない日。
といっても、早太くんの言っていた通り、恋人同士じゃなくて男女の友達同士や兄妹同士でも入園することは出来るんだけど。

でも、周りから見たら私と課長はきっと恋人同士に見えてるんだろうなぁ……なんて思って、ちょっとドキドキする。実際は、まだ付き合ってはいないんだけど……。


「うわ、あそこキスしてる」

「え!?」

課長の視線の方向に私も目を向けると、確かに男女のペアが、遊園地のマスコットキャラの前でキスを交わしていた。


「あー、これだな。『マスコットキャラ・エンジェルちゃんの前でキスをしたカップルは、エンジェルちゃんから当園限定キーホルダーをプレゼント』ってやつ」

遊園地の入り口でもらったパンフレットを読みながら課長が言った。


「キーホルダーをもらうために人前でキスをするなんて私には考えられません」

「そうか? 結構並んでるけどな」

「わっ、本当だ」

エンジェルちゃんと発見したカップルたちが、順番でキスをしていくため、エンジェルちゃんから少し離れたところで小さな列を作って待機している。


「キーホルダーには興味ないけど、お前が望むならあの列に並んでやっても――」

「望みません! 望みません! 望みませんっ!!」

課長のせっかくのご厚意(?)に、私は全力で首を横に振って、大声を出した。


「冗談だよ。そんなに否定すんな。何か傷付くわ」

「はっ! すみません! 傷付けるつもりは!」

でもやっぱり、人前でキスをするのは――ううん、人前でなくても、課長とキスするのは、やっぱりまだ、恥ずかしいんです……この間しそうになったけど……。
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