水曜日の片想い


「キミだって怪我してる」


「へ……?」


涙と鼻水でぐしゃぐしゃになった顔を上げると同時に、橘くんの瞳と視線が重なった。


綺麗なキャラメル色の茶色い瞳…………。


息をするのも忘れるくらい魅入ってしまいそう。

こんなに綺麗な瞳、初めて見たかも。



うっとりと目を奪われているうちに、


「ひぇっ!」


橘くんの体温が突然わたしの手に触れた。


急に掴むからびっくりして変な声が出ちゃったじゃん。



「えっと………橘くん?」


わたしの問いかけには答えず、何やらゴソゴソとポケットに手を突っ込んでいる。


な、何してるの………。



たしかに手の甲が少し擦りむいて血が出ているけど、そんな気にするほどじゃない。

落ちてきた本がかすったんだろう。


どうしたらいいかわからなくて、視線はずっとつかまれている手に釘付けだ。


こんなにずっと触れていたら手からドキドキが伝わりそうだよ。


< 21 / 291 >

この作品をシェア

pagetop