右肩の蝶、飛んだ。
駅まで戻ると今度はタクシーに乗り込む。
先に――直臣さんのマンションが見える。
そこで先に直臣さんが五千円を出して、私のタクシーの分まで払ってくれる。
お釣りを、次の日に直臣さんは絶対に受け取ろうとしてくれない。
――いや、今こそ、私は直臣さんを引き止めなきゃいけない。
「ふー。流石に朝から疲れたね」
『い、今から直臣さんのマンションへ行っていいですか!?』
「そ、うですね」
「明日から、予約分の発注の見積書とか悪いけどお願いするね」
「はい。本業は事務ですから」
『私の、マンションへ来て下さい』
頭の中の思考と、会話が全く絡みあわなくて困ってしまう。
でも、言葉に出すのは怖い。情けないけど、顎が震えてしまう始末だ。
『まだ帰りたくないです』
シンプルな、そんな誘い文句でも良いんじゃないかと思う。
きっと遊び慣れた直臣さんなら、――こっちから言えば、無理な時は気づかないない方法で断ってくれるだろうし、誘えば拒否しないと思う。