その嘘に踊れ

まぁでも、コレでよかったじゃん。

やっぱ、彼女を部屋から出すのは危険だし。
たとえ本当にただのご近所サンとはいえ、これ以上親交を深めるべきではないし。

うん、よかったじゃん。

諦めつくじゃん…

アオは見る。

手の中の浴衣を。


(…
クっ… グゥゥ… グァァァァァ!!
諦めきれねェェェェェ!!)


顔を上げたアオは、まるで睨みつけるようにキっと透子を見据えた。


「花火したいねって、前に話してたじゃん!?
お祭りには連れてけないケド!
コレ着て、一緒に花火を見ないかっ!?」


「確かに話したケド。
やっぱ部屋の中で花火は危ないって結論に達したハズ」


「部屋の中じゃなくて!
マンションの屋上で!
コレ着て、打ち上げ花火を見ないかっ!?」


「花火大会でもあるの?」


「あるよ!
コレ!着て!一緒に見ないかっ!!??」


「…
アオの目的はなんなの?
花火を見るコト?
私にソレを着せるコト?」


「楽しそうに花火を見る浴衣姿のしーちゃんを、思う存分愛でるコトですっっっ!!」


もう、煩悩剥き出し。

拳を固め、熱く言い放ったアオを見上げて、透子はとうとう吹き出した。

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