その嘘に踊れ

侵入


陽射しが強い。
湿度が高く、熱気が肌に絡みつく。

日本の夏は、思いの外過酷だ。

8月に入ってしばらく経つ。

状況は変わらない。
なんの進展もない。

顔見知りになった、人の良さそうなオバサン錬金術師に見送られてパチンコ屋を出たアオは、汗ではりつくTシャツを引っ張って中に風を送り込み、レイバン越しに太陽を見上げて溜め息を吐いた。

いやいや、いいンですヨ?
現状維持、大歓迎ですヨ?

愛しのしーちゃんと、ちょっとでも長く一緒にいられるワケですからネ?

昨日も、一緒にかき氷を作って食べたし。

一昨日は、キレイな透明の風鈴を、一緒にガラス用絵の具でカオスにしたし。

その前の日なんか『どーすれば部屋の中で花火ができるか』などと、頭を寄せあって真剣に考えたりして…

もうコレ、永遠に現状維持でイイかも。

でも…

いやいや…

でも…

はぁ… ジレンマですわ。

肩を落としてトボトボと歩きながら、再び深い溜め息を吐き出すアオ。

悩んでるトコ、申し訳ないケド…

今の君、溜め息が似合わないコトこの上ナシですYO!

だって、褐色肌にレイバンとか。
程よく筋肉がついた細身の身体をピッタリめに覆う白いTシャツと、アロハなハーフパンツとか。

おまけにハワイアナスのビーサン履いて、網に入ったスイカを持って歩ってるとか…

完全に、短い夏に浮かれるちょっとガラの悪いオニーチャンですYO!

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