その嘘に踊れ

誰得


「あ…
じゃあ、僕はこれで…」


下の階に住んでいるというヒョロい黒髪は、空気を読めるナイスガイだった。

中背で痩せ型、ジャージ、エロゲの主人公ばりに長い前髪という、引きこもりを絵に描いたような陰気なヤツだが、早々に退場してくれそうなナイスガイだった。

だが、ウェーブがかかったブロンドを首の後ろで結った、バスローブ姿のマッチョは…


「あら、アンタもゆっくりしていきなさいよ。
人間関係が希薄な現代、せっかく仲良くなれたご近所さんは大切にしなきゃ」


空気を読まないクソだよ。

その上、ツッコみドコロ満載じゃねーかよ、コノヤロー。

『ゆっくり』ってナンダ。
オメェんチじゃねーンだよ。

『仲良くなれた』ってナンダ。
まだ名前も知らねェよ。

ソレよりナニより、ジ○レミー・レナーを思わせる男臭いその風貌で、オネェ言葉はねェンじゃねーか?


(てかこの男…
前にマンションを見上げてた…)


「ねェ、アタシたち、会ったコトあるわよね!
ほら、この間、マンションの前で!」


まるでアオの思考を読んだかのように、ヘーゼルの瞳を輝かせた金髪が話しかけてきた。

思考はいいから空気を読め、コラ。

アオは冷たい目をしたまま口を開こうともしないが、金髪は一向に気にすることなく、オトメのように両手の指を組み合わせる。


「あの時、引っ越し先の下見中だったのよぉ。
でね?でね?アンタを見て、このマンションに決めたの!
だって、とってもとってもアタシ好みのイケメンだったンだもの!」

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