白い嘘

「ハァハァ……」


久しぶりにあんなに走ったからか、息が荒くなる。


心臓の音が激しさを増している。


手に持ったお弁当箱は、重く感じて。


「もう、やだ…。」


ため息と共に出た言葉は誰に届く訳でもなくて。


誰もいない薄暗い廊下を独り歩く。


C棟


廊下に貼られた校内案内板は私が私の教室から離れた場所にいることを指していた。


「………」


見慣れない風景が回りに並ぶ。


キーンコーンカーンコーン


「あ…」


何時もと何一つ変わらない、軽やかなチャイムが授業の始まりを知らせた。


腕時計の針はきっちりと1時45分を指していた。


もう、間に合わないよね授業。


ため息をつく。


なんだか、足に力が入らない。


歩くことも嫌になってきた。


誰もいない階段に吸い込まれるように近づいて座る。


そこだけ光が差し込んでいたからなのかな、落ち着く。


壁によっかかると、少しだけ暖かい。


埃が光に当たりながら舞う。


静か‥


顔を膝に押し当てる。


「‥‥‥‥‥」