クロネコ

chapter1

特になにもない。

それが私の日常。

ただ、学校に行って、家に帰って、また朝が来て、それの繰り返し。

アニメや小説、どこかの童話みたいなハプニングのようなものもなければ、その分、生きる楽しみもない。


これが私。


簡単な説明で申し訳ないけどこれ以上に語ることもなければ騙らせるようなこともない。


そして、今日も1日が終わる。


私の目の前を楽しそうに歩く親子の姿がなぜか、妬ましく思える。

ホントに醜い・・・。

真っ黒な長い髪を右耳にかけ、溜息をついた。


お洒落な雑貨屋のガラスに自分の姿が映る。

そろそろ髪、切ろっかな・・・。

そんなことより、早く家に帰らなきゃ。


少し足を急がせようとすると、何かを蹴っ飛ばしたような感覚が足に広がる。

足元を見てみると1匹の真っ黒な猫が私に向かって威嚇をしていた。


「あ、、、ごめん。」

私は猫に手を伸ばすと猫は嫌がるように私の手をひっかき、路地裏の方へと逃げていった。

まぁ、いっか。

私はもう一回足元を見ると、何故か、煮干のようなものが落ちていた。


あの猫の煮干・・・？

私が蹴っ飛ばしたせいで落としていったの・・・・？それにしても、随分間抜けな猫。


私は煮干をつまみあげると猫が逃げていった路地裏を歩いていった。

路地裏は予想以上に狭く、横向きに歩いてもギリギリ通れるくらいの幅だった。

私は鞄を右手に持ち、猫の姿を探した。

真っ暗な路地裏のせいもあって、猫の姿はなかなか見つからない。


私は諦めて路地裏を出ようとした時、どこからか猫の鳴き声がした。

「そこにいるの？」

私は引き返そうそうとした足を路地裏へと進めた。