それでもずっと愛してる



「あちぃ~」

美咲がパタパタと、手で仰いでも

全くこの暑さに追い付かない感じ。

季節は夏。

今年の夏は近年にない猛暑だと、どこのニュースでもやっている。

「暑い…しか、まったく言葉がないね~この猛暑、10年ぶりだって

ね、結衣、聞いてる?」

そういえば、10年前のあの夏は暑かった。

美咲の何気に言った10年ぶり…という言葉を噛み締める。


「ほらほら、またそんな顔する」

目の前の美咲がフロートの氷をカラカラ回す。

「結衣は昔から、すぐにそんな物憂げな顔をして、みんなを気にさせるんだから~」

美咲はイタズラっぽく微笑んだ。



美咲は、越してから初めて出来た友達だった。

高校一年の時に同じクラスで

私が、みんなとやっと話し始めた時に


「北村さんってそんな声してたんだ」


って、目を丸くして言った美咲に

裏表のない素直な人柄を感じて

すぐに仲良くなった。


その人柄は今も変わっていない。
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