それでもずっと愛してる
美咲の言葉に、瞳が一瞬およいだ。
「ちょっと、しっかりしてよ。
3ヶ月後には、10年越の彼と結婚する人が…」
美咲は大きく目を開き、そして、次に大きくため息をついた。
美咲には、話していた。
柊也のことを…。
私はこの10年間、柊也のことを忘れていなかった。
それは、ずっと気になって仕方ない、そんな時期も確かにあったが
時が経つにつれ、相庭くんとの時間の中で
それはだんだんと薄れていって
もう忘れてしまったかのように見えて。
でも
ふいに、例えば、今日のように
やたら暑い夏の日差しであったりだとか、
また、季節が変わり、寒い冬の風であったりだとか、
一日の終わりに見るきれいな夕陽だったり…
そういう、細切れな風景が、私の中にある柊也を思い出させ、あの頃に連れ戻した。