心ーKokoroー








彼は幼い頃からずっと

病院で日々を過ごしていた



両親はいなかった

物心つく前に事故で死んでしまった



生まれつき心臓が弱かった彼は

学校へ行けず

毎日小児科病棟で入院する子どもたちと

一緒に遊んでいた



だけど彼より幼い子は

彼よりも丈夫で

すぐに退院していき

彼は常に独りぼっちだった




毎日のように酷い発作を起こし

生きるか死ぬかの毎日を

延々と続けていた




彼が生きるには

臓器提供者…ドナーが必要だ

彼はドナーが現れるのを

今か今かと待ち望んだ




退院したら何をしよう?

サッカーがしたい

野球もやりたい

歌を歌いたい

楽器を弾きならしてみたい

思い切り駆けまわりたい




起き上がれないほど弱っていたにも関わらず

彼はベッドの上で

毎日そればかり想像していた








< 6 / 21 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop