夕焼けに照らされて
 少年は、私が部屋に入っていたことに気がついたようで、その美しい顔を私の方に向け微笑んだ。
 涼しげな目元。形の良い唇。白い肌と綺麗なスタイル。美少年、だ。しかし、目元だけが笑っていないことでなんとなく、不安な気持ちになる。

「君、名前は?」 

 静かに、意味ありげな笑顔を浮かべる。
 私は、黒髪の幽霊の話を思い出した。嫌な予感は当った。目の前にいるのは、黒髪の美しい幽霊・・・ではなく正真正銘の人間ではあるが。
 この部屋に他の人が入ってくるということは、思いもしていなかった。近頃は恐れて寄り付かないというのを通り越して、ほとんどの新入生は、どうでもよいと思い始めている。その上、入り口にカモフラージュがあるとなれば、他人が入ってくる可能性はほぼゼロである。
 焦りで心臓の音が大きくなるのが分かった私は、小さく深呼吸をして、気持ちを落ち着けた。

「15HR 紺野ひかる。あなたは?」

「工藤誠」
そっけない返事が帰ってきた。


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