Uncontrolled(アンコントロールド)
結局、一彰には、英会話教室で偶然朝倉と会い、その流れで夕食と共にしたと、当日のうちにメッセージを送った。
その判断は正解だったようで、朝倉と再会してからいつもより鳴るようになっていた着信音は、以前のペースに戻りつつある。星名が正直に伝えたことで信頼を得たらしい。確かに、第三者から聞かされるのとでは、気分も違ってくるだろう。
星名は、これまでも特段自分の交友関係をあれこれ話したりはしてこなかったし、一彰もそういうタイプだったので気にはしてなかったのだが、今回は朝倉の意見に従って間違いなかったのだと、アドバイスをありがたく思う。
恐らく一彰は、これまで億尾にも出さずにいたが、星名が思っている以上に心配性なところがあるのかもしれないと初めて思い付いたことで、二年弱付き合ってきて、まだ相手の本質を知るに至ってない自分は果してどうなのだろうと、自身への疑問までが表面化してくる。
これまで、ただデートを重ねてきただけではないと思っている。
漠然とではあるが、結婚を含めた将来像を話し合ったりしたこともある。映画を観て、討論に近い感想を言い合ったこともある。食べ物の好き嫌い、よく聞く音楽のジャンルに好きなミュージシャン。ある程度のことは分かっているつもりでいたのに、突然足元が覚束ないような気になってくる。
朝倉という、たった一人の男の登場によって、一彰との交際でこれまで疑ったこともなかったことが、急に大きな課題として目の前に聳え立ったようで、向き合うことを余儀なくされている。
お互いがもっと知っていかなくてはならないことがある。知る努力をしていく必要がある。
けれども、そう思えば思うほど、純粋に好きという気持ちだけで繋がっていられるのなら、他には何もいらないのでは?という逆説が、同時に湧いてきてしまう。

< 24 / 59 >

この作品をシェア

pagetop