Uncontrolled(アンコントロールド)
それから三日が経つが、朝倉からの連絡はない。
そのことに少しやきもきしてしまうが、次回会う日を約束した訳でも、二人のこれからを言葉にして約束した訳でもない。

朝倉にときめいた。
一緒にいると楽しいと思う。
また会いたいと思う。

けれども、彼によって強引に導かれた絶頂の数々が、どこかで待ったを掛けているのも事実だ。
恋心と性欲は別、といったふうに、身体と心を切り離せない。
満足した身体が、恋心とすり替えているのでは?と、冷静に考えてしまうのだ。
勿論、このまま朝倉の元へと突っ走ることができない理由の一番は、一彰のことだった。

携帯の電源を切っていた間、一彰からの着歴やメッセージは一度もなかった。
朝倉に部屋まで送ってもらい、冷蔵庫に食料を詰めているうちに意識がはっきりしてくると、慌ててバックから携帯を取り出し、連絡が遅れた言い訳をどうしようかと忙しなく思考を巡らせたというのに、その不安は稀有に終わった。それでも後ろめたさから、仕事のトラブルを案じるメッセージを送れば、その案件のせいで暫く連絡が取りづらくなるかもしれないと戻ってきた内容を見て、ほっと胸を撫で下ろしてしまったことに自己嫌悪する。

後悔はしていない。
けれども、一彰を裏切るような形は取りたくなかった。別れるにしても、きちんと話し合って終わりにしたかった。
とは思うものの、何かきっかけがなければ別離を選ぶことを先延ばしにしていただろう。一人身でいるよりはいいとゆるま湯に浸りながら、ここまで来てしまったような気がする。
結婚を考えている一彰と同じ方向を向いているふりをしていたなんて、彼からの好意に胡坐を掻いていただけなのかもしれない。

一彰とは、恋ができない。
星名が欲しいのは、ときめきやキラキラした恋心だ。
例え時が経てば薄れてしまうものだとしても、例え甘さとともに身を捩るような苦しさを得ることになっても、最初から何もないよりはずっといい。
もう自分の感情を置き去りにはできない。


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