Uncontrolled(アンコントロールド)
太陽の動きに合わせてカーテンの開け閉めは朝倉がしていたから、時間の感覚はあった。射光用のレースカーテンは閉められているとはいえ、日差しが差し込む中でのセックスは、隠そうにもお互いの全てを知ることができたし、例え夜の暗がりのなかでも、日中散々目に焼きついた相手の身体の、例えばほくろの位置や数はもう分かっていた。勿論、ほくろだけはなく、相手の敏感なところもだ。

身体が作りかえられてしまった、と感じるのは、女性ならではの感覚なのだろうか。朝倉を知る前と後とでは、何かが違っている。皮膚の表面的なことなのか、新しい快感のスポットを見つけ出されたからなのだろうか、もし一彰から同じようにされても、それは全くの別物のような気がする。

日曜日の夕方、朝倉は車で星名をマンションまで送り届けてくれた。
その道中、買い出しはしなくて良いのかと尋ねられて、二人で近所にあるスーパーに立ち寄った。
朝倉とのセックスで何度も迎えた絶頂や、絶え間なく続く快感の連鎖から極めている最中にも達してしまうという事を繰り返していたせいか、身体がふわふわと宙を浮いているような感覚は尾を引いていて、カートを押している朝倉の横を夢見心地で歩いているうちに、彼が星名の分の食料を適当に身繕っていて、気付いたときには会計が終わっていた。
星名自身は、朝倉が何を話しているのか理解しているつもりでいたし、自分はきちんと話しているつもりでいたが、少し舌っ足らずでぼんやりしていたのかもしれない。そんな星名を心配したのか、重い荷物は男性が持つというスマートさが身についているからか、朝倉は、星名がきちんと玄関を開けて自室に入るまでの間、見守るように側にいた。そしてすぐに鍵を掛けるように言うと、手の甲でそっと頬を撫でながら、またね、と微笑んだ。眩しさに目を霞めるようなその表情は、これまでとはどこか違う、まるで恋人に見せるような甘さを含んでいた。

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