やさしい眩暈







結局ルイは、私の住むアパートまで送ってくれた。


時間も遅かったから何度も断ったのに、それでもルイは頑なに首を横に振るばかりだった。



『こんなに泣いてる人を一人で帰せるほど、俺は冷たい人間じゃないつもりなんで』


『………もう泣いてないよ』


『駄目です。まだ目が潤んでるから、合格はあげられません。不合格です』


『なにそれ』



合格とか不合格とか、なんだかその言い方がおかしくて、噴き出してしまった。



『一秒でも長くレイラさんと一緒にいたい、っていう下心も、もちろんありますけどね』



茶目っ気たっぷりに微笑みかけられて、結局は断れなくなってしまった。



部屋の前まで来て、お茶くらい出さないと悪いかな、どうしよう、と迷っていたら、ルイはくすくすと笑った。



『俺を部屋にあげてもいいものか、悩んでますね』


『………』


『いいですよ、お茶なんて。恋人がいる女の人の部屋に、ずかずかあがりこんだりできませんよ』


『でも、この前は部屋に入ったよね』


『あれはイレギュラーな事態だったんで、ノーカウントです』



ルイは明るく笑って、手を振って帰っていってしまった。




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