やさしい眩暈







「―――レイラ」



愛しい声が、冷たく私を呼ぶ。



それでも、震えがくるほどの喜びを感じながら、私はうっとりと目を開いてリヒトを見た。


熱の余韻が残る瞼が重い。



「なに? リヒト」



愛しい名前を呼ぶ私の声は、自分のものではないかのように甘い。


月夜の露に濡れたような美しい瞳が私を見つめていた。



「お前さ、明日の夜、ヒマ?」



私は「うん」と即答した。


明日は久しぶりにバイトが休みで、いつものように私は何ひとつ予定など入れていなかった。



リヒトはさっき脱ぎ捨てたばかりの服を身につけて、


「早く着ろよ」


と私の下着を放り投げるようにしてこちらに寄越した。


たったそれだけのことで、泣きたいくらいに嬉しい。



「ありがと………」



私の呟きが聞こえたのかどうなのか、リヒトはいつものように、流れるような動作で煙草に火をつけた。


一服してから唇に煙草を挟んで、くゆる煙に微かに眉をひそめながら、すらりとした右腕を伸ばして、かたわらのギターを手にとった。



アルペジオを奏でるリヒトの指に目を奪われる。


リヒトが歌い出すと、涙が滲みそうになった。



「―――それ、新曲?」



リヒトが歌い終えると、私はベッドの上に腰かけたまま、ひっそりと訊ねた。




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