幸せの定義──君と僕の宝物──
ユウとレナは屋上の下の階にある展望スペースのベンチに腰掛け、手を握り合ってガラス越しに花火を眺めていた。

「キレイだね…。」

「レナと花火見に来るの、初めてだな。」

「こんな穴場があるんだね。」

「リュウがさ…ハルちゃん、花火大会に連れてってやりたくて調べたらしい。タクミから花火大会の事聞いたはずなのに、リュウに気を遣って、行きたいって言わなかったんだって。」

「ハルちゃん、いい子だね。そんな気を遣えるなんて、全然子供っぽくなんかないのに…。」

「あれくらいの年頃は大人に憧れるんじゃないか?ハルちゃんはリュウと歳が離れてるの気にしてるから尚更かもな。でもリュウは、そういうハルちゃんがかわいくて仕方ないんだ。」

「ハルちゃんが私の事、お姉さんみたいだって言ってくれたの。なんかもうかわいくて…。ハルちゃんと話してたら、女の子も欲しくなっちゃった。」

「気が早いんだな。でも、オレも欲しい。」

ユウが笑うと、レナもにっこり笑った。

「今日、よく歩いたから疲れただろ?」

「うん。でも安産になるように、たくさん歩きなさいって先生に言われてるから。」

「そっか…。ホントにもう少しだな…。」

「もうすぐこの子に会えるんだね。」

ユウはレナのお腹に触れて、今ここにいる我が子を抱く日を想像した。

「オレ、大人になってからレナと付き合えて良かった気がする。」

「どうして?」

「若い時は自分の気持ちばっかで、レナの気持ちとか考える余裕なかったから。あの頃レナと付き合えてても、そのままずっと一緒にいられたかなって。」

「私もユウと幼なじみで一緒にいた頃は、大人になるのが怖かったし…大人になった自分の姿なんて想像できなかったもんね。いろいろあったけど、なるようになってるのかもね。」

「それが今では結婚して子供ができて…レナと子供と一緒にいる未来を想像してるんだもんな…。オレたちも少しは大人になったって事かなぁ…。」





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