幸せの定義──君と僕の宝物──
お茶を飲み終えて少しすると、レナは出産のための入院に備えた荷物が入ったバッグの中身を確認した。

(一応、念のためにマユに連絡しておいた方がいいかな…。)

レナはスマホを取り出し、マユに“もしかしたら今日かも知れない”とメールを送った。

すると、マコトが今朝から熱があって、シンヤも取材で留守にしているので、今は家を空けられないと言う内容の返信が届いた。

(どうしようかな…。リサも今日までは日本にいないみたいだし…。)

まだ陣痛が始まったとハッキリしてもいないのに、直子を呼ぶのも気が引ける。

(陣痛が始まったら直子さんに連絡するとして…。いざって時は仕方ない…。ハルちゃんに病院まで付き添ってもらおう。)

レナはもしもの時のために、あれこれ考えを巡らせた。

「レナさん、お昼どうします?」

「何か簡単な物でいいかな…。御飯もあるし、チャーハンでも作ろうか。」

「じゃあ、ハルが作ります。」

「ありがとう、楽しみ。」

とりあえず少し落ち着こうと、レナはソファーに身を沈めた。

(初産はそんなに甘くないって言うし…。陣痛も長いんだろうな…。)

そう思いかけて、レナはマユの出産の時の事を思い出した。

(破水したら、普通の陣痛より早くなるんだった…。)

それでもレナは、ライブを控えたユウには心配掛けまいと、連絡は今はしないでおこうと思いながら、なんとか夜までは陣痛が来ませんようにと祈るしかなかった。



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