腹ぺこオオカミはご機嫌ななめ
その後のふたり
5年後。僕は40歳になった。
「美雨、早くして。」朝の出勤前は忙しい。
僕は両脇に2人の子供を抱えている。双子の女の子だ。
ウサギはリュックを背負い、両手に保育園に預ける荷物を持っている。
「待って、ツカサさん。」とウサギは慌てて、僕を追ってくる。
子供は2歳。美冬と美雪。『ふゆ』と『ゆき』って呼んでる。
車の後部座席には2台のチャイルドシート。
順番に乗せて、シートベルトを締めるけど、ちっともじっとしていない。
ぐずる2人と、ウサギをなんとか詰め込んで車は動き出した。
やれやれ。毎朝戦争のようないそがしさ。
「ツカサさん、お疲れ様。」とウサギははいつものように笑顔を見せる。
「ウサギ、仕事はこれからだよ。」と僕は笑う。
「ツカサさんは今日は当直でしたよね。」とウサギが僕に確認する。
「そう。お母さん、来てくれるって?」と聞くと、
「ツカサさんが当直の日が楽しみみたいです。」とウサギが笑った。
双子のギャングはウサギ1人ではとても面倒が見きれない。
ウサギの両親は初孫を溺愛しているので、
僕が留守の時には喜んで面倒を見てくれている。
安心だ。
ウサギは双子の妊娠がわかって、車の免許を取って、今では保育園のお迎えくらいは出来るようになった。
もちろん、オートマ限定免許だから、水色の軽自動車をもう一台用意した。
いつも、仕事を終えて、買い物をして帰って、(双子がいたら買い物はムリ。)そして、軽自動車で双子の迎えに行く。
妊娠後期は安静のために入院生活を送ったけど、子供たちは2000グラム位で産まれてきた。
(双子は少しだけ、大学病院のNICUにお世話になったけど、問題なく退院できた。)
そしてウサギは双子が1歳になってから、復職し、外来で仕事をするようになった。
ウサギにとって、仕事は社会と繋がっている。って思えるみたいで大切にしているし、
僕もウサギが大切なので、結構イクメンになっているみたいだ。
僕らはまだ、あの部屋に住んでいる。少し、狭いけど、双子に目が届くし、便利な場所だ。
それぞれに子供部屋が必要なくらいになったら、もう少し広い家にしようって事にした。
まあ、妊娠がわかってから、家のことを考える余裕がなかったとも言える。

保育園に着いて、ウサギと一緒に子供と荷物を抱えて、見送りに行って、
双子に行ってきます。と順番に頬にキスをしていると、
「両手に花だな」と声をかけられる。
リュウと奈々ちゃんだ。







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