腹ぺこオオカミはご機嫌ななめ
話題の映画は、家族愛の物語で、ハッピーなものだったけど、
途中で悲しい場面もあって、僕は危うく、涙が落ちそうになる。
ウサギを見ると、涙が流れっぱなしで、画面に食いついている。
可愛い。僕は笑い出さないように注意しながら、
ウサギにハンカチを渡し、ウサギの表情を時折、盗み見る。
映画の場面に合わせて、クルクルと表情を変えるウサギ。
僕はやっぱり、君が好きだよ。

遊園地にでは僕の手を引っ張り、乗り物に乗っては
(もちろん、僕は地上で待つ。)両手を上げて、
嬉しそうに、大声を上げ、
夕焼けの観覧車で、そっと抱き寄せると、
緊張した様子で、顔を背ける。
まあ、キスのチャンスをうかがってみたけど、
思いっきり、ウサギがおしゃべりを始めたので、
僕は笑って諦めた。

夜のレストランでは、夜景をうっとりとながめ、
目の前で焼きあげられる肉や、伊勢海老を興味しんしんで見つめ、
シェフのパフォーマンスには、思わずふたりで拍手した。


帰りの車の中で、何度も楽しかった。と言って、
僕に笑顔を見せる。僕は
「今日は車だったから、最上階のBARには行けなかったな。
次に来る時には泊まろうか?」とウサギの顔を覗くと、
ウサギは顔を真っ赤にして、下を向く。
うーん。まだまだ、時間がかかりそうかな。
それまで、僕の理性が持つだろうか?
と思いながら、
帰り道クルマを走らせた。
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