Bu-KIYOびんぼう ~幼なじみと不器用な約束~
汗っかきの先生は、首に掛けたタオルで額をぬぐった。

「テスト頑張ったな。たまには、ゆっくりしろよ」


何か用事がないかな…

何か…

何かないかな…



だけど、先生は背を向けて、騒いでいる生徒を注意しながら行ってしまった。


自分の体をギュッと抱きしめた。


もっと痩せないと。

あと7キロは痩せたい。



早足で帰ろう。

駅まで歩いて、もう少し歩けそうならもう一駅歩いて…



「キヨ」

タケルくんが、声を掛けて来た。


「気にするなよ」

「うん…でもユリエちゃん大丈夫かな?」


タケルくんが、外に目をやった。

「明日から夏服か…」

「お母さんが長袖着なさいって。まだ寒いもんね」

窓の外では、大きな柏の木が葉だけをバタバタと揺らしていた。

校庭の砂が舞い上がる。


「砂漠の塩」

「え?」


振り返ったら、たくさんの生徒の中にタケルくんの背中だけが見えていた。
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