Bu-KIYOびんぼう ~幼なじみと不器用な約束~

初めて、お父さんが病院へ来た。

「こんな姿になっちゃって…一番楽しい時期のはずなのに…」


お父さんが、近くの椅子に腰を掛けた。

看護士さんたちに、盛んに話しかけてる。

「受験生を受け持ってるもんですからね。僕もなかなか…でも本当に辛いなぁ…娘が、こんな風になるなんて。親としてこんなに辛いことはないですよ」

「話しかけてあげてください」


看護士さんが言う。


「私たちにじゃなくて」

「はい…本当に話したいことは沢山あるんですけど、いざ本人の姿見たらね、胸がいっぱいになっちゃって…清子、清子、お父さんだよ?分かるか?」


目を開けるので精いっぱい。

声を出したけど、かすれてるから聞き取れないみたい。


「お母さんがね、離婚したいって聞かないんだよ。お父さん、こんなに家族の為に頑張ってきたのにね…。

清子が家に帰った時に、家族がそろってないなんて、清子が可哀想じゃないかって、何度もそう言ったのに…お母さん、聞いてくれないんだ。

あの人は頑固なところがあるからね。清子がこんなになるまで治療の方針を変えなかったし。でも清子もそういうところあるよね?お母さんに似たのか…」

「お父さん、清子ちゃんが何かしゃべってますよ」

「どうした?やっぱり離れて暮らすのはイヤだよな?」


一生懸命、声を出した。

「お父さん…私がいじめられてた時…何もしなかった」


お父さんは驚いて目を見開いた。

「え!そんなことないよ?お父さんだって、学校に行って先生と話し合ったりしたよ?」
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